シレトコ先住民族エコツーリズム研究会 設立の趣旨
シレトコは世界遺産にも推薦されるほどの世界的に貴重な自然の宝庫です。さまざまな施策により生態系が守られてきたと同時に、それよりはるか以前から連綿と続く人と自然との程よい関係が今のシレトコの姿を残してきたと言っても過言ではありません。そういった、有史以前からの、シレトコの自然と共存した生活様式や世界観・自然観、儀礼・因習をさまざまなかたちで現代に語り継いできたのが、北海道の先住民族であるアイヌ民族です。そのアイヌ民族は明治時代以来の同化政策によって、先祖から受け継いできた本来の文化を否定され失ってきました。
しかし、これから世界遺産となるシレトコを私たちが胸を張って世界に紹介するためには、たんに自然だけでなくアイヌ民族のもっていた自然との多様な関わりを、アイヌ民族自らが主体となって知らせていくことが必要であると考えます。
一方で、アイヌ文化とは決して過去のものではありません。先祖から受け継いできた文化も重要ですが、それを21世紀のアイヌの人々がさまざまなかたちで「発信」していくことが現代のアイヌ文化だと思います。「自然と共生してきたアイヌ民族の知恵に学ぶ」といったステレオタイプな見方を押しつけるのではなく、今を生きるアイヌの人々の多様な文化のありようを知ってもらうことが重要です。アイヌ自身が主体となったエコツーリズムは、そうした新しい文化発信の手段となりうるのではないでしょうか。
人は人と出会いに旅に出ます。自然との出会いも感動的ですが、やはり人は、新しい土地で新しい人と出会うことに喜びを見出し、またその土地に帰ってきたいと願うのです。シレトコが世界中の人々にとってそのような土地になるには、シレトコの、そして北海道の先住民族であるアイヌの人々との心からの交流が欠かせません。先住民族の関わらない世界遺産は、ほんとうの世界遺産とは言えないでしょう。この地を訪れる誰もが、アイヌの人々や文化とふれあえるようなシレトコを目指したいと思います。
つきましては、現代のアイヌの人々がつくりだす生き生きとしたアイヌ文化を、シレトコを通じて世界の人々に知ってもらうために、「シレトコ先住民族エコツーリズム研究会」を設立し、さまざまな文化発信を考え、実践していきたいと思います。
2005年4月25日
代表 梅沢 征雄 |